読むだけで運転が出来るのようになる運転教本
運動神経が全然なくて、運転センスもない〝さやちゃん〟が〝ぱんだ先生〟に突っ込まれながら運転練習をしていくうちに、自動車の運転が出来るようになっていく奮闘記です!運動神経がなくても、ちゃんと基本が出来ていれば安全運転ができるようになる!

第3話 運転にめっちゃ影響を及ぼすんやで!
私は、車のまわりを一周ぐるっと安全確認をしてから運転席に座った。そしてシートを合わせてシートベルトを締めた。
〝カチッ!〟
シートベルトを締めてからぱんだ先生を見ると、すごい細い目でこちらを見ていた。

『なんですか?ちゃんと車のまわりを確認してから運転席に座りましたよ。』
と私は言った。
『それは、見てたから知ってるわ!』
とぱんだ先生は細い目のままで言った。
『なんでそんな顔してるんですか?チベットスナギツネみたいな顔になってますよ!』
と私は言った。

チベットスナギツネのような顔のまま、ぱんだ先生は言った。
『そら、そんな顔になるで。さやちゃんの運転姿勢を見ると…』
ぱんだ先生は私の運転姿勢を上から下まで見た。
『えっ?運転姿勢ですか?ちゃんと座ってシートベルトを締めてますよ!』
と私は言った。
『あのな、運転姿勢っていうのは運転の基本中の基本や!プロのドライバーから初心者までみんな一緒や。運転姿勢がちゃんと出来ん奴が運転なんか出来るかいな!』
初めは冷静に話していたぱんだ先生だったが、後半になるにつれて語尾がだんだんと強くなり、声がどんどんと大きくなっていった。
『すみません。』
なんだかすごい勢いだったので私は、思わずあやまってしまった。
『あっ、すまん。つい興奮してもうたわ。』
ぱんだ先生は一息ついてから話を続けた。
『運転姿勢がちゃんと出来てないとな、運転が上手くなるどころか、危険な目に遭うことになりかねへんのやで。「運転姿勢なんて関係ないやろ」って、案外軽視されがちなんやけど、運転にめっちゃ影響を及ぼす事なんやで!』
『なるほど!教えてください、運転が出来るようになりたいんです!』
『おっ、良い心掛けやないか。よし、やっていくで!』
『はい!よろしくお願いします。』
と私が言うと同時に、ぱんだ先生は言った。
『まずな、シートにぴったりに座り!』
『ぴったりですか?』
『そうや、ぴったりや!』
『さやちゃんは、腰が背もたれから離れてるねん!手が入る隙間あるやん!この隙間いらんねん。お尻も腰も背中も全部シートにピッタリにするねん。』

『えー、窮屈じゃないですか?』
と、私が言った瞬間にぱんだ先生はチベットスナギツネの目になった。
『自分、運転上手くなりたいんちゃうん?』
とぱんだ先生は言った。
『運転上手くなりたいですけど、窮屈なのは嫌です。』
と私は言った。
『ほー、そんなこと言うねんな。じゃあ、その姿勢のまま急ブレーキ踏んでみな!』
とぱんだ先生が言うと、車が勝手に走り出した。すると、突然、目の前に急に子供が出てきた!
『きゃー!危ない!』
私はブレーキを踏んだ。

しかし、力が入らない。
ブレーキがしっかりと踏めない!
ブレーキペダルが遠い気がする!
一生懸命にブレーキペダルを踏む
ダメー!!!!ぶつかるー!!!
私は思わず目をつぶった
心臓がとてもバクバクしていた。
どうしよう。子供をひいてしまった。
なんてことをしてしまったんだ。
とにかく子供を助けないと!
と私は目を開けて車の外に出た。

しかし、そこに子供の姿はなかった。
なにがなんだかわからなかった。
私は、ぱんだ先生の方を向き
『さっきいた、子供は…』
私がそう言うと、ぱんだ先生は運転席へ座るようにうながした。
『大丈夫や、あれはワシが作った想像やから、運転席に座り。』
私はまだ心臓がバクバクしたままだった。そして、ふらふらっと運転席に座った。
『いきなりえらい体験させてしまったな、すまんかった。やりすぎたかもしれん。』
と、ぱんだ先生があやまってきた。
『さ、さっきのは、現実ではないんですか?』
私はおそるおそるぱんだ先生に聞いた。
『そうや、今のはワシが作った想像をさやちゃんに見せたんや。』
その言葉を聞いて
『そうなんですね…よかっ…た…』
私は、安堵とともに涙が出てきた。
『さやちゃん、ワシがさっき言ったこと覚えてるか。』
とぱんだ先生は言った。
『さ、っき、です、か…』
私は、泣きながら答えた。
『運転姿勢がちゃんと出来てないと「運転が上手くなるどころか、危険な目に遭うことになりかねへんのやで。」って言うたわな。』
とぱんだ先生がこっちを見ながら言った。

『はい、言ってました。』
と、私は答えた。
『もし実際に運転してるときにこういう場面になったらって、一度考えてみよか。』
私は、想像した。自分が運転していて子供が飛び出してきてブレーキを踏んだけど全然車が止まってくれない場面を。そして言った。
『車が止まりませんでした。ブレーキも全然ふめませんでした。』
車があんなにも止まらないとは思わなかった。続けて言った。
『車を止めたくて強くブレーキを踏もうとしたんですが、全然踏めなかったんです。』
ぱんだ先生は優しい口調で言った。
『そうやろ。ブレーキ踏んでも車は急には止まらへんねん。だから、危険を予測した運転をしたり、速度を落としたり、色々工夫して、止まらん車でも止まるように運転するんや。ほんでな、運転姿勢もちゃんとしてたら、しっかり急ブレーキを踏むことも出来るんやで。』
『!!!』
私は、やっと気づいた!ぱんだ先生が、運転姿勢と言っていた意味を。さきほど「窮屈だ」と言った自分が恥ずかしくなった。
『運転行動の中で一番大事なことは、ブレーキなんや!』
ぱんだ先生はで言った。
『ブレーキがちゃんと踏める!しかも何かあった時にしっかりと急ブレーキが踏める。これがとても大事なことなんや。』
とぱんだ先生が言った。私はさっきの状態を思い出していた。全然ブレーキを踏めなかった自分を。
『ぱんだ先生、ちゃんとしたブレーキが踏める運転姿勢を教えてください。』
私は、何かあった時でもしっかりブレーキが踏めるようになりたいと強く思った。